人事BPRの進め方|差し戻し・承認待ちを減らす業務フローの見直し表
ここでは、既存業務の目的と進め方を組み直す取り組みを人事BPRとして扱います。ツール選定の前に、何が届けば着手でき、どの条件なら誰が判断し、何をもって終えるかをそろえます。
1.対象は「人事全体」ではなく、一つの依頼から完了まで
兼任人事が毎日問い合わせに追われている場合、まず直近に繰り返し発生した一つの業務を選びます。たとえば研修申請なら、社員が申請を作り始めてから、参加可否の連絡を受け取るまでが対象です。人事担当の入力作業だけを短縮しても、申請者の作業や上司の待ちが増えるなら全体の改善は確かめられません。
対象、開始点、終了点、利用者、守るべき品質を記入し、通常案件に加えて差し戻しや急ぎの案件も追います。規程に書かれた手順と、実際に通った手順は別に確認してください。ASQのフローチャート解説も、工程の境界を決め、関係者と実際の流れを照合する手順を示しています。ASQ:Flowchart(2026年10月6日確認)。以下の人事向け様式はCareerSync編集部の設計例です。
2.作業時間と、案件が止まっている時間を分ける
一件ごとに受付時刻、着手時刻、判断依頼時刻、回答時刻、完了時刻を記録します。人が手を動かした時間と、回答待ちの経過時間を同じ合計にしないでください。「入力は10分だが、承認まで3日かかる」といった構造を見つけるためです。この数値は説明例で、標準処理時間ではありません。
| 工程の見直し表 | 記入する内容 | 判断する問い |
|---|---|---|
| 入力と受け渡し | 入力者、元データ、受取者、使う項目 | 同じ情報を別の人が転記していないか |
| 確認と承認 | 確認対象、判断基準、決裁者 | 事実確認と意思決定が混在していないか |
| 待ち時間 | 止まった場所、待ちの理由、連絡先 | 不備待ちか、判断待ちか、日程待ちか |
| 差し戻し | 不足項目、修正担当、往復回数 | 受付時点で不足を伝えられないか |
| 完了 | 処理結果、通知先、記録の保管先 | 担当者の処理完了と利用者への通知が一致するか |
完了案件だけを集計すると、長く止まっている案件が見えません。未完了の件数と受付からの経過も別に並べ、どこに判断が残るかを確認します。
3.廃止・統合・標準化を決めてから自動化する
各工程について、誰が何のために使うかを確かめます。使い手がいない集計は廃止候補、同じ情報を扱う様式は統合候補、不足が繰り返される依頼は入力条件の標準化候補です。承認を外す場合は、必要な管理や決裁規程への影響を権限のある人が確認します。
自動化の候補は、入力、処理ルール、出力、例外の戻し先が定まった工程です。「担当者なら事情を察して直す」仕事は、その条件を先に言葉にします。AIを使う案でも、誤った出力を誰が確認するか、処理できなかった案件をどう戻すかまで定めてから試します。
4.架空例:研修申請の受付と例外判断を組み直す
次は実在する顧客事例ではありません。メール申請を人事が表へ転記し、不足事項を往復確認した後に上司へ回す会社を想定します。申請項目を目的・受講内容・日程・金額・業務への影響へそろえ、人事の転記をなくす案を考えます。
| 場面 | 変更案 | 残す管理 |
|---|---|---|
| 必要事項がそろっている | 共通の受付記録をそのまま上司の判断に使う | 申請した版と承認した版を対応させる |
| 項目が不足している | 不足一覧をまとめて返す | 再提出先と、再受付した日時を残す |
| 予算・日程に例外がある | 理由と選択肢を指定の判断者へ渡す | 通常承認と例外承認を混同しない |
| 判断が終わった | 結果を本人へ通知し、記録を閉じる | 未回答のまま自動承認にしない |
5.試行の合格条件と、元へ戻す条件を先に置く
切替前に、通常受付、不足項目、例外、判断者不在を試します。利用者に新旧両方へ入力させ続けるのではなく、試行対象と正本の保管先を明示します。比較は同じ種類の案件で行い、作業時間、待ち時間、差し戻し理由、誤処理を確認します。繁忙度が違えば、その条件も残してください。
- 必要な確認や承認を省略せずに完了できるか。
- 申請者と人事の合計の負担を確認したか。
- 例外や不在時にも、次の担当が分かるか。
- 通知漏れや重複処理が起きた場合の停止・復旧担当を決めたか。
- 切替日以前の未完了案件を、誰が旧手順で閉じるか。
今週は対象を一業務に絞り、実際の案件を入口から出口まで追ってください。外部へ支援を依頼する場合は、現状フロー、詰まりの記録、変更案、試行結果、引継ぎ手順を成果物にすると、人事コンサルティングの支援範囲も具体化できます。
よくある質問
システム導入を先に決めてもよいですか?
更新時期などで選定が先行しても、残す判断と例外処理は先に整理します。既存の往復作業をそのまま新システムへ移すだけで終わらないようにします。
削減時間をそのまま人件費削減と考えられますか?
同じ意味ではありません。空いた時間を何の仕事へ移すかと、実際に変わる支出を分けて確認します。試行で観測していない効果は実績として扱いません。
この記事はCareerSyncの支援方針・実務上の考え方を整理したものです。個別の顧客事例や成果の報告ではありません。
