部門間の連携を改善する方法|依頼・回答・優先順位をそろえる合意書
営業と納品担当など、仕事を受け渡す二部門の間で使う連携合意書を作ります。対象は通常の業務調整です。組織図を変える前に、具体的な案件で責任の境界と判断の詰まりを確かめます。
1.「相手が協力しない」を、止まった案件へ戻す
営業は「返事が遅い」、納品側は「条件が足りない」と感じている場合、会議の回数を増やすだけでは原因が残ります。直近に手戻りした案件を選び、依頼した情報、受け手が必要とした情報、顧客に約束した内容、判断待ちになった時点を両部門で確認します。
相手の姿勢の評価ではなく、案件の記録を使います。共通の目的も「仲良くする」ではなく、「実行可能な納期を顧客へ回答する」のように、両部門で達成する状態へ置き換えます。個別部門の目標が衝突している場合は、その衝突自体を経営へ示します。
AtlassianのWorking Agreementsは、コミュニケーションの方法、問題を上位者へつなぐ手順、合意を見直す方法をチームで定める実践を公開しています。以下は、この考え方を参考に、二部門の業務受け渡し向けに作ったCareerSync独自の合意書です。
2.部門間の連携合意書に入れる項目
| 項目 | 合意すること | 曖昧なままだと起きる問題 |
|---|---|---|
| 対象と共通の成果 | 対象案件、開始点、終了点、守る品質 | 部門ごとに完了の意味が違う |
| 依頼の成立条件 | 必須情報、未確定でも相談できる条件 | 不備の往復と、相談自体の拒否 |
| 受付と回答 | 受付先、一次回答の期限、確定回答の扱い | 受領が納期承諾と誤解される |
| 優先順位 | 通常・急ぎの区分、優先変更の判断者 | 声の大きい案件が割り込む |
| 変更と例外 | 仕様変更、情報不足、担当不在の処理 | 旧条件のまま作業が続く |
| 決められない場合 | 判断者、渡す選択肢、判断までの暫定対応 | 双方が相手の回答を待つ |
| 更新と見直し | 正本の場所、更新者、確認日 | 部門ごとに異なるルールが残る |
受付を確認する期限と、実現可能な納期を回答する期限は分けます。未確定の条件がある場合は、受け付けないのか、仮の条件で相談するのかを決めます。仮回答には前提と有効な範囲を添え、顧客への確定約束として扱わないようにします。
3.架空例:営業と納品部門で、納期回答をそろえる
以下は架空の受注業務です。期間・担当は説明用の設計で、一般的な納期や回答速度を示すものではありません。営業が受注条件を整理し、納品部門が実行可能性を確認する会社を想定します。
| 合意欄 | 記入例 |
|---|---|
| 目的と対象 | 通常商品の追加注文について、実行できる納期を回答する。特注品は別途相談 |
| 依頼情報 | 商品、数量、希望日、配送先、仕様の版、顧客への説明済み事項 |
| 受付方法 | 共通の案件一覧で受領を記録。メール・口頭の相談も案件番号へ紐づける |
| 一次回答 | 翌営業日までに、条件がそろったかと確定回答の予定日を返す |
| 未確定条件 | 仕様が未確定なら、仮の条件と、確定後に納期再確認が必要な旨を記す |
| 変更時 | 営業が変更箇所を記録。納品側が影響を確認し、合意前に旧納期を再約束しない |
| 競合時 | 納品責任者が影響する案件と選択肢を整理し、事業責任者が優先順位を決定 |
| 見直し | 2週間試行し、回答待ち・情報不足・負担増の場面から修正する |
「急ぎ」は依頼者の希望だけで確定しません。対応が遅れた場合の影響、他案件を動かす必要、追加費用の有無を記入します。顧客への説明担当も明確にし、社内の優先順位変更が決まってから関係する顧客へ必要な説明を行います。
4.利害が衝突したときの判断依頼を一枚にする
部門間の調整で解決できない案件は、「営業と納品で相談してください」と差し戻すだけにせず、共通の判断者へ上げます。争点、選択肢、顧客影響、費用、他案件への影響、判断期限をそろえると、上位者が具体的な案を選べます。
| 選択肢の例 | 確認する影響 | 決める前に必要な情報 |
|---|---|---|
| 通常の順番を維持 | 新しい依頼の希望日に届かない | 顧客が許容できる時期と代替案 |
| 他案件と順番を入れ替える | 既存の約束に影響する | 対象案件の責任者・顧客への確認状況 |
| 数量や範囲を分ける | 分納や追加調整が必要になる | 分けられる単位、費用、受入条件 |
比較表は、どれかを推奨する一般則ではありません。自社の約束、品質、費用、顧客関係から判断します。決定後は、選んだ案と理由、伝える相手、実行担当を記録します。人事は合意形成や責任分担の整理を支援できますが、事業上の優先順位を決める権限まで自動的に持つわけではありません。
5.小さく試し、受け手だけに負荷が移っていないか確認する
まず一種類の案件で試します。通常案件、情報不足、仕様変更、担当不在を扱えるかを確認し、実際の記録からルールを直します。全社共通の細則を先に増やすより、困った場面で参照できる短い合意にします。
- 依頼情報の不足と、判断待ちを区別して記録できたか。
- 一次回答と確定回答の違いが、両部門に伝わったか。
- 案件の難しさや繁忙度が違うものを単純比較していないか。
- 依頼側の転記や受け手の確認が増え、全体の負担が移っていないか。
- 未完了案件も含め、次の担当と回答予定日が分かるか。
- 合意を変えた場合、適用日と進行中案件の扱いを伝えたか。
今週は、直近の手戻り案件を両部門で一件ずつ持ち寄り、依頼の成立条件と回答の意味からそろえてください。個人へ渡す判断範囲は権限委譲のルール、部門内も含む工程全体の再設計は人事BPR、経営へ上げる論点の整理は意思決定会議で補えます。
よくある質問
部門間の定例会議を増やすべきですか?
先に、会議で決めることと事前に共有できることを分けます。通常案件は記録で進め、優先順位や例外の判断が必要なときに集まる設計も可能です。
合意した期限を守れない場合はどうしますか?
担当者を責める前に、依頼量、条件不足、判断権限、稼働時間を確認します。期限の見直しか体制変更かを責任者が決め、影響する相手へ新しい見通しを返します。
参考資料:Atlassian:Working Agreements(2026年10月7日確認)。部門間の合意書、判断表、架空例はCareerSync編集部による設計例です。
この記事はCareerSyncの支援方針・実務上の考え方を整理したものです。個別の顧客事例や成果の報告ではありません。
